この指とまれ<語り合う読書会> 今回は「村上春樹」

あなたも「風の歌」を聴いたことがあるに違いありません。

「1970年8月8日に始まり、18日後、つまり同じ年の8月26日に終わる」この物語の舞台は「21歳の僕」の故郷で、「海から山に向かって伸びた惨めなほど細長い街」。乾いた海風に吹かれながら、友人とビールとレコードとタバコとラジオと女と共に所在無く過ごす日々の中でこの物語は展開されます。

9月11日、「せせらぎ会館」2階、今回初参加の古関さん・北澤さんを含む15名が集まりました。事前にレジメを作成して参加した方、LINEで著者に関する情報を整理・展開してくれた方、勿論、文庫本一冊を手に参加した方、思い思いの参加スタイルで読後感・意見・情報等々を持ち寄り活発に語り合いました。

「村上春樹は初めて」「昔は二三冊読んだことがある」などその読書歴はさまざま。本会は、何でも良いので感じたこと、思ったこと、忌憚のない意見交換の場との趣旨なのですが、「テーマって何なんでしょうね?」「平易な文章だし読み易いけど、サラッとし過ぎてて、何が言いたいのかわからない!」「「僕」はしょっちゅうビール飲んでるね!」など、いつもの通り「?」や「!」から始まります。

会が進行するにつれ、1970年という時代背景(学生運動の高まりと終焉)、高度経済成長の余韻、音楽で言えばフォークソングからニューミュージックへ。その中で挫折の経験から距離感をもって自分を見る一面と何かをやり遂げたいという一面の二面性を持つ主人公、言葉にできない喪失感や自分のレゾンデートル(存在意義・自分の居場所)に揺れる「僕」といった考察、舞台設定が東京・大阪ではなく芦屋といった謎解き、アメリカ西海岸のイメージ想起、レイモンド・チャンドラー(米国の小説家・脚本家)との繋がりからの作品解析、「希望や失望は、常にあって風のように流れていく。(中略)人生とはそのようなものだ」や小説家が小説を書けなかったらどうすればいいのか?との「僕」の問いに「自信過剰」と批判気味のコメントも。                       また、『ノルウェーの森』などの他の作品にも話が及び、村上春樹作品は海外でよく読まれてるけど、作品の魅力やのノーベル文学賞候補に挙げられる理由は何だろう?など本作品に留まらず広範囲での意見交換ができ、とても充実した2時間でした。

「『風の歌を聴け』を選んだのは、作家は最初の作品に<その人のすべてがある>と言われているからです。村上春樹の膨大な作品群における小説の秘密を『風』で探りたかった」と言うのが本会の主宰者中森さんの選定理由です。「書くのはひどく苦痛な作業」であり「文章を書くことは楽しい作業でもある」は本書内での著者の言。村上作品のデビュー作として「群像新人賞」受賞した本書には愛読者も多く、この機会に是非会員の皆様にも手にとってお読みいただきたい一冊です。

文責 沼澤

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