大正の末から昭和の初めにかけて大田区の馬込や山王には著名な作家や芸術家たちが暮らし「馬込文士村」と呼ばれていました。住人たちは若き日の尾崎士郎、その妻宇野千代、室生犀星、川端康成、石坂洋次郎、佐多稲子、吉屋信子、萩原朔太郎、北原白秋、小林古径、山本周五郎等々、錚々たる顔ぶれが住み活況を呈していました。その文士村の中心にいたのが尾崎士郎です。尾崎士郎が仲間に「馬込よいとこ…」と声をかけ、多くの文士たちが馬込界隈に移り住むようになったようです。
10月12日、秋の好日にその「馬込文士村」を訪ねました。ガイドしていただいたのは地元のボランティア団体「馬込文士村ガイドの会」の皆さんです。今回の散策では尾崎が晩年を過ごした自宅を復元した尾崎士郎記念館や室生犀星、山本周五郎などの住居跡を訪れ、若き日の文豪たちに思いを巡らせました。尾崎士郎記念館では書斎の机に山積みされた書物、相撲好きな尾崎が「テッポウ」をした大欅などを見ると彼の息づかいとともにどこかにワセダの匂いを感じます。あの「人生劇場」が繋ぐ早稲田との縁を感じた散策でした。