3月2日、第107回粟谷能の会を鑑賞してきました。大田稲門会関係者20人、八千代稲門会関係者6人がぽかぽか陽気の中を千駄ヶ谷の国立能楽堂に集まりました。
大田稲門会として鑑賞するのは今回が3度目で番組は能「景清」、狂言「秀句傘」と能「石橋(しゃっきょう」の3番です。
「景清」は壇ノ浦で源氏に敗れ、日向の国宮崎に流されて乞食となって暮らす平家の落武者悪七兵衛景清を、鎌倉に住む娘人丸がはるばる訪ねていく再会と、それに続く別離という親子の恩愛を主題とし、それに落胆した景清の嘆き、なお残る平家の侍としての矜持を盛り込んだ作品です。盲目の景清役の粟谷明生氏の盲目者として、そして寂しく歳をとった者としての動き方、あるいは屋島での戦いで見せた一瞬の刀捌きなど見どころの多い作品でした。
「秀句傘」は野村万作、萬斎という豪華親子出演の狂言です。因みに「秀句」とはしゃれや冗談という意味。最後に落ちがつき、くすっと笑わせるしゃれた作品でした。
「石橋」は最初の「景清」とは打って変わって動きの多い華やかな作品です。舞台は中国、文殊菩薩の浄土清涼山(しょうりょうせん)。その手前にかかる石橋を渡ろうとする天竺唐土巡歴の寂昭の前に童子風の異形な男が現れ、高所(標高3,000m)にかかる細く滑る橋(幅30㎝)は並みの修行者では渡れないと言います。その形状を詳しく述べるうちに向かいの清涼山から荘厳な音楽が聞こえてきて、文殊に仕える獅子が2頭(親獅子、子獅子)華やかに舞い踊ります。この獅子達の舞いは本作品の眼目であり必見物です。
洗練された能役者の細やかな動き、大鼓、小鼓、太鼓の「ひょー、ポン」の小気味良さ、8人の地謡の息の合った謡い、情緒あふれる笛の音など全体としての調和の美しさに酔いしれた素晴らしい1日でした。
参加者 平賀健康(73理工)
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